昔から違和感のある言葉があります。それは「節税」。

当たり前かのように普段使われますし、税理士の仕事として重要なものとされています。

ただ最近

「節税」という言い方が誤解を招くのかも。「適税」のほうが良いのでは?

と思うときがあります。

適正に計算した税金を更に減らす方法は脱税

税理士の使命として、「租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図る」ことが挙げられています。

どこにも「節税」などとは書かれていませんし、あくまで「納税義務の適正な実現」です。

法令に従って計正しく算された税額を実現することです。

「法令に従って正しく」という部分が一般の人には難しいからこそ、税理士という専門家が必要であると考えています。

法令に基づいて正しく計算された税額は、適正な税金計算になっているはずです。

適正に計算された税金を更に「節約」する方法はないですし、もしあるとしたらそれは脱税です。

「節税」は魔法のようにも聞こえる

どうも世間一般で言われている「節税」は、適正に計算した税額を更に減らすことができるような魔法の意味で使われている場合も多い気がします。

税理士に頼めば税金を減らすことができるとも思われていますが、情報の非対称性がないこの時代そうでない場合も多いです。

税理士と契約すれば最新情報を得たり、アンテナを張ってもらうことはできますが、

魔法はかけられません。

法令に従って粛々と適正な納税義務の実現のために邁進するのみです。

ただ、適正な納税義務の実現を図るために最新の法令を勉強しておくのは、税理士として当然であると考えます。

節税本に書かれていることは本質を考えると疑問があるものも

節税本に書かれているものでこれは提案できると思えるものは限られています。

例えば法人に関しては、

  • 役員の事前確定届出給与を活用する
  • 雇用促進税制を適用する
  • 所得拡大促進税制を適用する
  • 中小企業等投資促進税制を適用する
  • 青色欠損金を活用する
  • 未払費用を計上する

など。

上記に書かれているものを実行できるかどうかは法令に従って適正に税額計算する、つまり「知っているか、知っていないか」ということだけです。

一方、次のようなものは本質とずれていて微妙です。

  • 中古資産を購入する
  • 消耗品を購入する
  • 生命保険に入る
  • 交際費の限度額を目一杯利用する

例えば「中古資産を購入する」はその資産が会社の利益に貢献するかどうかで考えるべきですがそこから既にズレて「税金を減らす」ことにフォーカスされてしまっている。

生命保険も、将来にお金に備えて入るものだし、交際費も得意先と良好関係を築くためにあるはず。

まあ、そんな綺麗事いらん、どうしても税金払いたくない!という人もいると思いますが・・

使ったお金がすべて節税できるということはないので、かえって資金繰りが悪化することもあります。

更に悪影響なのは税金を減らすことにフォーカスされると会計帳簿が汚れることです。

会社の実態を表していない会計帳簿は税金対策的には良いかもしれませんが、

もっと大切な、銀行融資を受ける場合・経営者が判断する場合に役にたたない代物になってしまいます。

まとめ

節税という言葉を使うのであれば、それは既に「納税義務の適正な実現」、言うならば「適税」に包含されている概念であると考えます。

適正な税金は法令に従って粛々と計算されたもので、魔法のようなものはありません。

ただ納税者の方が自分で複雑怪奇な税法を網羅するのは困難です。足りない知識、アンテナを補ってもらうために税理士を利用してみてはいかがでしょうか。

編集後記

今日は年末にご依頼いただいた方の仮想通貨の税金の申告業務を中心に。

コインチェック騒動の後も、何かと落ち着かない仮想通貨市場。当分落ち着かないでしょう。

午後は非居住者の方の日本での納税について打ち合わせでした。

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