昨日クラウド会計のfreeeから定期的に届く雑誌の中で、会計から申告までをノンストップで行うパッケージソフト「クラウド申告freee」が紹介されていました。(リリース時期はまだはっきりとでていませんでした)

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現状、freeeの法人版は決算書までは作成できますが、申告については達人などの申告ソフトと連携させるしか方法がありません。

従って決算書までは自社でできたけれども、申告については会計事務所に頼むか、年1回しか使わないにも関わらず申告ソフトを購入して自分で提出する方が多いようです。

更に、提出方法も電子申告システムがあるのにもかかわらず紙で提出する方が多いようです。

なぜかというと、大手の税務申告ソフト以外の安価なソフトは電子申告に未対応で、更には電子証明書、カードライタの準備、ソフトのインストールなどかなり手続が面倒だからです。

また、現状の申告ソフトは専門的な税務知識がある人以外をターゲットにしていないためかなり使いづらいです。

このような状況の中、会計・電子申告を一気通貫させる「クラウド申告freee」をfreeeはリリースするようです。現時点で考えられること、期待することを書いてみます。

申告ソフトはユーザーのためのもの

申告納税制度を掲げるのであれば・・

常々感じていたのは、「申告ソフトはユーザー目線で開発すべき」ではないかということです。

我が国は一部の税金を除き、所得税・法人税等について申告納税制度を掲げています。

であるならば、自分で自分の税金を計算することを前提とする申告ソフトがあるのは当然ではないでしょうか。

しかし現状の申告ソフトは専門知識がある人しか操作ができません。freeeは当たり前のことをしようとしているだけなのかもしれません。

紙の形式である必要はない

現状の申告ソフトを見ると、別表の紙がそのまま電子になっている印象を受けます。

(もちろん、紙と違って数字が自動的に入る等の機能はあるのですが)

しかしユーザーの目的は「正しい税金計算を行う」ことであって、「申告書を作成する」ことはあくまで手段でしかありません。

であれば、紙の形式にこだわる必要はないのではないでしょうか。

例えば、別表4をぱっと見て何を計算しているのか分かる人はいないでしょう。

「留保」「社外流出」など難しい言葉ばかりでそれらを調べだしていたら膨大な時間がかかります。

最終的に紙の形式の申告書は自動でできるにしても、ユーザーが見るインタフェース部分は紙形式を踏襲する必要はないのではないでしょうか。

Q&A方式、ビジュアルを使ったインタフェースはどうだろう

例えば交際費の損金不算入について。

交際費については一部費用として認められない部分があります。それを計算するのが下記の別表です。

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ユーザーは現状、「交際費の一部を、費用にできない」ことをまず知っていなければいけません。(中小企業はほぼ認められますが)

このようなことを残高試算表の科目から判断してソフトから「交際費のうち費用として認められない金額があるかもしれません」と提案してもらえれば楽ではないでしょうか。

また上記の表には「交際費等の額から控除される費用の額」「接待飲食費」「中小法人等」「損金算入限度額」など定義が分かりづらい用語ばかりです。(左に説明はあるのですが租税特別措置法〇〇条・・と書かれて更に分かりづらいです)

私たち専門家である税理士はもちろん理解すべきことではありますが、ユーザーの目的は正しい税金計算をすることで難しい言葉を理解することではありません。

1つあればいいなと思うのがQ&A方式やビジュアルを使ったインターフェース機能です。

例えば中小法人等の定義は「資本金1億円以下で、資本金5億円以上の大法人との完全支配関係がない等の一定条件を満たす法人」です(また完全支配関係とか難しい用語がでてきました)。

これをQ&A方式にすることにより自動的に判定してもらえればいきなりつまづくことはなくなるはずです。

理想は、質問に答えることによって自動的に別表が作成できることです。

せめて難しい用語にはポップアップ形式で説明がほしいところです。

電子申告と現実とのギャップの解消を期待

以前勤めていた会計事務所での実務でどうしても違和感が拭えない部分がありました。

それは、「電子申告」という名がついているのにもかかわらずあまりにも税務署と紙のやりとりが多かったことです。

電子申告制度が定着してから初めて勤めた税理士法人での経験です。

法人決算と電子申告を終え、「終わった~」と思っていたところ先輩税理士から

「税務署に送る書類、送った?電子申告で送れない書類あるでしょ」

と当然のように言われました。

それを聞いて「ええ~!「電子」申告なのにデータで完結できないなんて・・」

と思いましたが、長年業界にいる人にとっては当たり前のことのようでした。

こういった違和感はやはり業界にいる人よりは実際に必要としているユーザーの人のほうが敏感です。

freeeとしても、決算書まではできても申告が結局会計事務所頼みで、紙ベースになってしまう点に葛藤を感じていたようです。

国との関わりなので難しいと思いますがe-taxやel-taxとの連携強化、使いやすさの向上も願いたいところです。

その他期待する機能

現在のfreeeの会計ソフトで優れているのがリアルタイムで会計数値を把握できる機能です。

これに税務申告データがつながるとリアルタイムで概算の納税額が分かるようになります。

もちろん、事業年度末にならないと分からない未確定債務などの項目はありますが規模の小さな中小企業については調整項目も少ないので十分ではないでしょうか。

今までのように「納税の概算を教えてほしい」と言われてから申告ソフトに入力して・・ということを考えれば大きな進歩です。

また、年に数回の予定納税や年に1回しか払わない償却資産税、事業所税などは納期が近づいてきたらアラートしてくれるなど年間の納税スケジュールが組み込まれているとより安心ですね。

まとめ

法人税の申告まで行うことができる「クラウド申告freee」の現時点で考えられる影響や、期待することについて考えてみました。

自分の会社の税金計算を自分で行うことのできる申告ソフト、これはある意味あって当然です。

今までは会計事務所の特権として申告ソフトは守られてきたのでしょう。

私たち専門家が今後求められることは専門知識を常にアップデートし「指導、アドバイス」など専門家にしかできない付加価値の高い仕事をすることではないでしょうか。

こうやって書いていると自分も申告ソフトの開発に関わりたくなってきました・・(^^;

税金計算=つまらないもの、面倒なものという図式から税金計算=楽しいものに変わっていくことを願っています。

編集後記

今日は午後から横浜商工会議所の新会員の懇親会でした。

横浜は建築業を営んでいる事業所の割合が高いようで意外でした。

かなり大勢来ていて、数人話したところで疲れて出てきてしまいました・・(懇親会、苦手)

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目の前は夕方の山下公園!風が気持ちよかったです。

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