経営者が毎日チェックすべきものは資金繰り表
7/132017
カテゴリー:お金の考え方
正しい決算・申告を行うためには複式簿記・発生主義による記帳が必要。
事業を始めたばかりの経営者はよく知っていることだと思います。
今月地元の法人会で新設法人向けにセミナー講師をするのですが、そのレジュメには「税金の仕組み」「正しい決算の仕方」が詳しく書かれています。
しかし事業を継続していくために本当に必要なのはまずお金です。
いくら複式簿記・発生主義によって完璧に記帳できても、お金がなくなれば事業は継続できません。
税務署・銀行はできあがった決算書を必要としますが、経営者は決算書よりもまずはお金の管理をする必要があります。
発生主義が数字を分かりにくくする
決算書を作成する上で必須となる発生主義は、計算上の儲けである「利益」(売上 – 費用)と実物の儲けである「お金」との間に差をもたらします。
これが経営者にとって数字を分かりにくくしています。
発生主義とは、その名の通り取引が発生したときに記帳する考え方です。
例えば、掛売上をしたときには実際に現金が入金されたときではなく、
発生時(物を引き渡した時、サービスが完了した時など)に認識します。
同様に費用を掛支払したときも、実際に現金を支出したときではなく、
発生時(物を受け取ったとき、サービスを受けた時)に認識します。
この場合売上、費用が発生した月に利益は動きますが、お金の動きはありません。
例えば掛売上が100、掛による費用の支払が50があった月には利益とお金の間で
50の差が出ることになります。
このことを理解していないと、なぜ利益が出ているのにお金は少なくなったのだろう・・と疑問を持つことになります。
例えば先にお金が出ていく(売上が掛で、費用が現金払い)ようなところだと、利益とお金の差はもっと広がります。
このような会社は運転資金(毎月回すお金)が圧迫され、資金繰りが厳しくなります。
逆に大手の小売チェーンなど先にお金をもらう(売上は現金で、費用が掛払い)ようなところだと、運転資金がどんどん増えて資金繰り的には非常に楽です。
実際には借入金、固定資産、減価償却費、増資など他にも利益と現金残との間に差額をもたらすものがありますが、
まずは差額の大きな原因(現金収支を伴わない掛売上、掛支払)が分かっていれば問題ないでしょう。
毎日資金繰り表をチェックしよう!
起業したての経営者は、資金繰り表を独自に作成して毎日チェックすることをお勧めします。
資金繰り表、と言っても難しいものではなく毎月の収入・支出が一覧で分かるものであれば大丈夫です。
クラウド会計を使っている人限定になってしまいますが、大手クラウド会計ソフトfreeeとMFクラウドには便利な資金繰り表の機能が備わっていますのでこちらを加工するのも良いでしょう。
(以下、freeeのヘルプページ資金繰りレポート | freeeより表を引用。)
例えばfreeeですが、期間を定めて収入・支出を棒グラフで、残高を折れ線グラフで表示することができます。
運転資金が不足していないか、大まかなチェックにはこういった図を利用するのが便利です。
資金繰り表部分には、営業収支(主に売上、仕入)と投資収支(設備投資など)、財務収支(借入金など)に分かれています。
まずは事業を継続していくための要である、営業収支が継続してプラスになっているかを確認しましょう。
その上で投資収支、財務収支が営業収支で賄いきれているかを確認します。
また、資金繰り表には今後の入出金予定を含めることができます。
入出金予定のデータは下記のとおり水色で表示され、将来の資金繰りを予想するのに便利です。
この入出金予定を資金繰り表に反映させる機能を最大限に使うためには、
「予定されている収支を予めすべて入力しておく」
が有効です。
例えば、家賃やリースなど予め定額で決まっている支出はすべて「未決済取引」として入力しておくのです。
なお、MFクラウドにも「予定」機能を使えば入出金予定を資金繰り表(MFでは「キャッシュフローレポート」と名前がついています)に反映させることができます。
事業の生命線であるお金の動きは、毎日確認しましょう。
まとめ
起業したてのお客様のお話を聞くと、利益とお金の違いが分からなかったり、資金繰りに悩んでいる方が多いことに気づきます。
大企業でもなければ、詳細な決算書の分析など必要なくまず必要なのはお金の管理です。
体裁など気にしないで良いので、自分が理解して納得できる資金繰り表を作り毎日チェックすることから始めましょう。
編集後記
昨日は午前中仕事をしたあと午後は明日の租税教室講師の模擬授業。
地元の中学生を相手に、税金の仕組みを分かりやすく説明します。