非営利組織(主にNPO)の資金調達について書かれた本を読みました。

ファンドレイジングを直訳すると「資金集め」ですが、著者は資金調達という手段だけではなく「社会を変えていく手段」として捉え直すべきとしています。

例えば、母子家庭を支援するNPO法人が存在するとします。

当然困っている母子家庭を支援するためには資金をどこかから調達してこなければなりません。

だからといって適当に人の多い場所に行って「母子家庭の皆様に少しでも助けの手を!」と呼びかけたところで寄付はあつまるでしょうか。

寄付を受けるためにはまず大前提として自分たちの社会に存在する「問題」とその「原因」を顕在化させ、それを世間に啓蒙していくプロセスが必要になります。そういったプロセスの中で、自分たちの存在価値を認めてもらい、問題に共感してもらうことによって気づきや行動のきっかけを初めて提供することができます。

このような理由から、著者はファンドレイジングを「単なる資金集めの手段」ではなく、「社会を変えていく手段」と言っています。

NPOの寄付活動にもう少しネットを取り入れたらどうか

私もNPOの「寄付集めの手段」についてはずっと気になってはいました。

つい先日も、横浜駅の近くでNGO団体の人がチラシを配っており、気になったので受け取って話を少し聞いてみました。

その後も何か手続的な話まで進みそうだったので「ちょっと検討してみます」ということでその場は退散しました。

正直、歩いている人をたまたまつかまえて「共感して、寄付してもらう」ことは何らかの事前情報がある人でなければ相当難しいと思います。

NPOの情報はまだまだネット上で少なく、何らかの団体を支援しようにも一人で見つけるのは困難です。

しかしこれだけネットの情報が主流となっている時代に、わざわざアナログなやり方で非効率的に寄付集めを行う必要はあるのでしょうか。

FacebookやTwitterなどのSNSも利用すればもっと「寄付を必要としているNPO」と「寄付をすることにより社会貢献したい人」をつなぐことができるのではないかと思います。

「平等」の精神が浸透している日本では寄付は必要なしとの考えが強い

私は今まで日本の寄付活動が欧米と比べて活発ではないのはただ単純に寄付文化がないからだと思っていました。

しかし、少し古いデータですが99年から00年に日本で寄付した世帯の割合が77%の数字にもなると本には書かれています。

確かに、コンビニその他スーパーやレストランのあちこちで見かける募金箱、駅構内での募金活動、寄付金付き年賀状などのサービス、、など日本には寄付文化がないとはいえないかもしれません。

ただし、頻度はあるにしても総額はやはり少なくアメリカの個人寄付の100分の1という差があります。人口がアメリカの方が2倍近く多いのですがそれを考慮しても相当の差があります。

この状況をこの本では日本を「つり銭寄付社会」と表現しています。

確かに、小銭が余るくらいだったら・・ということで募金箱に入れる方も多いのではないでしょうか(実は私もそうです。。)。

日本のこのような文化(気が向いたときに寄付をする)は日本は世界的にみると貧富の格差が小さく、「みな平等」という考えが浸透していることが理由に考えられると著者は言っています。

象徴的なのが「困ったときは、まず家族や身内でなんとかする」という考え方ですね。

大震災のときなどは政府や地域社会、多数のボランティアが被災者を支援しました。

これとは対照的にアメリカなどの国は貧富の差が非常に大きく、富める者が寄付をすることは義務であるという暗黙の了解があります。

つまり日本は「平等感」が全体に浸透しているため、「皆が助け合っているのだから、寄付など必要ないのでは?」という認識を生んでいる土壌になっているのだと著者は言っています。

平等であるがゆえに寄付文化が浸透しない。なかなか興味深い見解だと思いました。

「社会変革型寄付」に移行できるかがカギ

日本の「つり銭型寄付」とは対照的にアメリカなどの寄付は「社会変革型寄付」と書かれています。

「社会変革型寄付」とは、「Make a Difference!(変化を起こそう!)」という意味で行われる寄付活動のことです。

つまり「自分の行った寄付によって〇〇が実現した」という目的志向型寄付なので、「寄付の成功体験」が出やすく大口の寄付もでてきやすい側面があるのです。

日本が「つり銭寄付」から「社会変革型寄付」に移行すればNPO法人の資金調達だけでなく社会全体の価値観、考え方が変わっていく可能性があるのではないでしょうか。

現に待機児童問題、介護問題、虐待問題など国だけでは対処できない複雑で優秀な人材が必要な分野でのNPOは今後ますます重要になってくるはずです。

日本が「社会変革型寄付」へ移行するためには、日本人全員が寄付への意識を変える必要があります。更に、寄付を受けるNPO法人側も寄付者に対して寄付金によってこれだけの人が救われた、これだけの成果があったなどの情報公開をもっとすることによって寄付者の「成功体験」を増やしていく必要があります。

まとめ

以前からNPO、NGOには興味を持っていました。

アメリカでは、大学生の就職したい企業ランキングに必ずNPO法人が何社か含まれています(NPO法人のトップは普通の会社のトップよりも報酬が高い場合もあります)。

それと比べて日本では大学生の就職したい企業はいまだに10年前からほとんど変化はなく、NPO法人がランキングに入ったためしなどありません(日本のNPO法人の報酬・給与はかなり低いです)。

なぜこのような違いがあるのか、この本を読んでよく分かりました。

個人的には今後日本では寄付文化は活発になっていくと感じています。

先日記事にした「ふるさと納税」は、寄付とは若干意味合いが違いますがこれだけ認知度が高まるということは日本人の寄付への興味が年々高まっている証拠だと思います。

日本社会に埋もれている問題を顕在化させ、国民の共感を得ることによって困っている人を助けたいというNPO法人の方々の想いと、その活動を寄付という形で貢献したいという寄付者との想いをどうつないでいくか。

今後非常に興味あるテーマです。

編集後記

雨が降ったりやんだり。

今日は傘が手放せない天気でしたね。

ムシムシしていて、しかも雨が突然やんで日がいきなりガンガン照らしてきて・・汗かきな私に言は一番苦手な天候です^^;;

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