最近は、人工知能(AI)ブームで新聞や雑誌で見かけない日はありません。

私の仕事である税理士業界でも「AIが仕事を奪う!」なんて騒がれて久しいです。

これだけ騒がれているのにもかかわらず、AIについてはいまいち理解がぼんやりしていたところ、読んでみた本がこちら。

これまでのAIの研究の歴史や基礎となる知識、AIの今後の肝となる「ディープラーニング」について詳しく書かれています。

今まで「AI」と言われていたものの内容がおぼろげながら理解できました。

特に役立った部分を紹介します。

「AI」の定義ははっきりしない

この本の最初の章に「人工知能はまだできていない」と書かれておりいきなりのインパクトです。

世の中には「AIが搭載された○○」などと言われる商品があるのにもかかわらずAIはまだどこにもないという。

そもそも「AI」といっても専門家によってその定義が違っているようです。

この本の著者である松尾豊さんは、AIを

「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」と定義しています。

これに対して国内の人工知能のメッカと呼ばれている公立はこだて未来大学教授の松原仁さんは、AIを

「究極には人間と区別がつかない人工的な知能のこと」

と定義しており、ほぼ人間と同じ知能を指しているように思えます。

このように専門家でさえ定義がはっきりしないAI。

私たちも何か情報(新聞など)に接するときは、何をもって「AI」と定義しているかをしっかり確認する必要がありそうです。

「AI」と言われているものの種類

分かりやすかったのが、「世間でAIと言われているものの種類」を体系化されていた部分です。

  1. 単純な制御プログラム→エアコンや掃除機、洗濯機など。既に制御工学やシステム工学で説明できるものであり、「AI搭載」と呼ぶにはいささか問題あり
  2. 古典的な人工知能→振る舞いのパターンが多彩なもの。将棋のプログラムや、掃除ロボット、質問に答える人工知能など。
  3. 機械学習を取り入れた人工知能→検索エンジンなどビッグデータをもとに自動的に判断したりする人工知能。与えられたルールや知識を自ら学習。
  4. ディープラーニングを取り入れた人工知能→機械学習をさらに進めた「特徴量」自体を学ぶもの

現段階では、AI搭載と書かれていた場合3.の機械学習を取り入れた人工知能が主流なのだそうです。

会計業界でいえば、データを一定のルールで自動仕訳するクラウド会計ソフトなどが該当しそうです。

新聞や雑誌、買い物などで「AI搭載」と書かれていた場合に上記のどれに当てはまるか考えてみると勉強になりそうですね。

今後のAI進歩の肝となる「ディープラーニング」

現段階で一番多い第3レベルの人工知能は、大量のデータを用いてどのように出力するかのルールをコンピュータ自らが学ぶ「機械学習」がメインです。

この本で言っているのは、機械学習をさらに進めた「ディープラーニング」が今後AIの肝になるということです。

ディープラーニングとは、コンピュータ自らが特徴量(データのどこに注目すべきか)を作り出すことができる技術です。

機械学習の場合には、「データのここに注目してね」ということを人間が指示する必要があったのですが、ディープラーニングは「データのどこに注目すべきか」自体を学ぶという点が大きな違いです。

なぜ「ディープ」とついているかというと、人間の脳神経回路を再現したニューラルネットワークのようにデータを多層階に分けるから、ということなのだそうですがここら辺は専門的でよく分かりませんでした。。

ただ今まで人間の介在が必要だった「データのどこに注目すべきか」の判断が、コンピュータ自らができるようになる、というのは素人目から見ても大きな進歩だと思います。

これによってAIでは無理と思っていた「提案型」の仕事もある程度可能になるのでは、と感じました。

我々の仕事にどう影響するか?

そして、この本にも近年よく話題にされる「近い将来なくなる職業」が記載されていました。

そこには漏れなく我々が関係する「税務申告代行者」も・・。

私はAIについては個人的に「今すぐ仕事が大きく変わる」とは思っていませんが、ある一定のきっかけ(ディープラーニングの飛躍など)で「一気に世の中の仕事が変わる」のでは、と考えています。

特に会計・財務など目に見えないデータを多く扱う分野はコンピュータの得意な部分。

既に大きなインパクトである機械学習に加えディープラーニングが進めば、あながち将来なくなる職業は間違っていないのでは、と考えています。

ただ悲観的にはなっておらず、AIを正しく理解した上で「機械でできること」「人間ができること」が明確に分かれていくのを理解することが重要だと思っています。

自分がしている仕事の中で、「この部分はAIになるな」というのを意識していけば問題ないのではないでしょうか。

まとめ

つい先日某クラウド会計ソフトを利用している社長さんが、

「振り込んだ給与が自動的に「消耗品費」で処理されていました。まあ、会社にとっては私たちは消耗品でしょうけれども・・」

などと自嘲気味に書き込まれていたのが印象的でした。

ディープラーニングが進めば

「人に対する支払いを「消耗品費」で処理するなんて失礼です!」

という認識がAIにも根付くかもしれませんね(^_^;)

紹介した「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」は、

新聞や雑誌、ネットだけでは得られない凝縮した内容が得られるAI入門の良書です。

一冊こういった基本の書籍を読んでおくと理解がだいぶ進みますので、お勧めです。

編集後記

昨日は問い合わせ対応、給与計算レビュー、歯医者など。

そういえば本には「歯科医」「歯科技工士」は「残る職業」に記載されていました。

人間の身体に直接関わる職業(お医者さんとか、美容師さんとか)だとAIでできることは限られそうですね。

確かにロボットに治療はされたくないかも・・(^_^;)

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