クラウドの流れと物理的な事務所の意味
8/192016
カテゴリー:テレワーク
税理士業界にクラウドの波が訪れているのは周知のとおりです。
主なクラウド会計ソフトとしては、
- freee
- マネーフォワード
- 弥生会計オンライン
があります。
これらの会計ソフトを使えば、インターネット環境があればいつでも、どこでも会計処理を行うことができます。
ふと、「会計まではクラウド上でできるようになっている。でも、クラウド上で税務申告書作成までできるソフトはあるのだろうか?」と考えてみました。
個人の申告に関しては上記の3つのソフトは確定申告にも対応しているため問題ありません。必要機器(マイナンバーカード、ICカードリーダなど)さえ揃えば電子申告まで可能です。
法人の申告に関しては上記の3つのソフトは単体では申告はできないものの、NTTデータが提供する税務申告ソフトである達人と連携しているため達人を購入すれば申告書まで作成することができます。
更に、無料で使える法人用クラウド型税務申告ソフトである「フリーウェイ税務」(ただし2社目以降は有料)や、税理士向けにはNTTデータと全国税理士データ通信協同組合連合会が協業して開発した「達人クラウド」、「JDL IBEXクラウド組曲」などがあります。
一般の人たちだけでなく、会計事務所にもクラウド会計・申告の波が及んできています。
こういったクラウド型会計・申告ソフトを開発している会社は「どこでも会計事務所を実現!」「利用する端末を選ばず、いつでも会計事務所を実現!」などのキャッチフレーズを売りにしています。
事務所に人がいなくなる!?
こうしてみてみると、「物理的な事務所」の意味を考えるべき時にきているのではないかと感じます。
各クラウド型会計ソフトが提案する「いつでも、どこでも会計事務所」では文字通り時間と場所を限定しないからです。
職員は、わざわざ事務所に行かなくても、在宅でデータセンターにつながっているPCを立ち上げ、スキャナでクラウド上に保存された領収書を見ながらクラウド型会計ソフトへの入力ができます。
税務申告についても、職員が在宅でクラウド型申告ソフトに入力したデータを外出先から税理士がチェックをし、ICカードリーダと電子証明書を使ってその場で電子申告・・ということが可能な時代なのです。
されど、税理士法
ここで問題になるのが税理士法第40条で定める「税理士は、税理士業務を行うための事務所を設けなければならない」という規定です。
この規定は2か所以上で税理士業務を行うことを禁止しており、
- 税理士業務を一か所で行うことが法律関係を明確にするうえで便宜であること
- 個人の監督能力を超えて業務の範囲を拡大することを事務所の面から規制し、これにより税理士以外の者が税理士業務を営むことを防止すること
を趣旨としていますが、この法律ができた頃にはまさか「いつでも、どこでも会計事務所」の時代がくるとは想像すらできなかったのでしょう。(実際、事務所を1か所に限定することと名義貸しの問題とは因果関係はそれほどないように思えますが・・)
実際、紙ベースで記帳・申告をしていた時代にはこの規定の存在意義も大きかったのかもしれません。
しかし、NTTデータやJDLなどの大手の企業が堂々と「いつでも、どこでも会計事務所」とうたっている中、この規定の存在意義も再考するときにきていると思います。
基本に立ち戻れば税理士の使命
税理士の使命は、税理士法の第1条に定められています。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
上記のことを実現することと、「いつでも、どこでも会計事務所」を実現することは同時に可能だと思います。
元気の良い職員さんが揃った清潔な事務所に訪問してじっくりとお話をしたいというお客様もいれば、普段のやり取りはSkypeやチャットなどでもきちんと仕事をしてくれる税理士と随時コンタクトが取れればいい、というお客様もいます。
環境の変化、価値観の多様性によって、「物理的な事務所」の意味も変わっていくのではないでしょうか。
今後、クラウド型会計・申告ソフトの普及とともに税理士法改正への動きも注目したいです。
編集後記
今日は苦手なムシムシ度が非常に高い日でした。
歩いているときに立ち止まるとなぜあのように滝の汗が出るのでしょう・・