知的創造のロングセラー本、高根正昭さん著の「創造の方法学」を読みました。

この本は、

問題解決の基本的な要素である原因と結果を明瞭にし、

その因果関係を結び付ける仮説をたて、検証する(=知的創造)方法論をまとめた本です。

38年も前に書かれたものとは思えない程、内容は今にも通ずる内容でした。

(ただ、パソコンがあまり普及していない時代、多変量解析を行うためにパンチ・カードを利用したという記述はさすがに時の流れを感じました)

アメリカでの留学経験をエッセイ風に交えながら、知的創造の方法論をかみ砕いて説明しています。

著者は1931年生まれ。戦後、日米安保反対運動に参加し、その後アメリカへ留学、スタンフォード大学、カリフォルニア大学でコミュニケーション学、社会学を学びます。

敵国であったアメリカの大学で厳しい実績主義を目の当たりにし、日本の教育が模倣に偏っていると著者は危機感を覚えます。

特に分かりやすかったのがアメリカと日本の幼児教育の違い。

たとえばアメリカの絵にしろ工作にしろ、教師や両親が手本を示してはならないという原則がある。

(省略)アメリカの幼稚園ではクレヨンの使い方、絵の具の混ぜ方、粘土のこね方は技術として教える。しかし親と教師は手本を示して、それを子供に模倣させるようなことはしない。

(省略)当座のきれい事のために、より大切な創造の力を、子供から奪ってはならないという思想が彼らの間にはある。

著者は上記以外にも、日本の大学における論文が様々な文献の引用を寄せ集めた「記述」になってしまっていることも危惧していました。

現在も、状況はあまり変わっていないのではないしょうか。

日本の教育では、何をするにも「模範解答」「お手本」があります。

こういったものを最初に与えてしまえば、原因と結果を明瞭にし、仮定をたてて検証する、といった知的創造の力は強くならないでしょう。

実際に私もいわゆる机上で得た知識ではなくて、知識や経験を基に何かを創造するための方法論が大切と感じたのは大学を卒業してからです。

今の教育では、決められた正解を出す力はつくからもしれませんが、新しいものを生み出す知的創造力は身につかないでしょう。

 

歴史や宗教、科学に関する難解な言葉も多くすんなりとは読めませんが、

著者の鋭い指摘と主張が気持ち良いくらいに明快に記述されていて読了後爽快感がありました。

著者はこの本を書いた2年後の1981年に50歳の若さでお亡くなりになられていて、非常に残念です。

現在、書店にも

「論理的思考力をつけるためには」

「考える力をつけるには」

などロジカルシンキングの本が溢れていますが、

この本は正にそういった本を一括する良書です。

  • 決まった答えを暗記するのではなく、原因と結果を結び付ける方法論を学ぶことが大事
  • 方法論の確立の中で知的創造が生まれる。

何度か読んで理解を深めたい本です。

編集後記

本日は、MFクラウドや、freeeから落としたCSVデータをエクセルで加工するのに悪戦苦闘。

加工しやすいデータにもっとなっていればいいのですが・・。

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