法人を設立したほうが良いですか?という難しい質問に対する唯一の答え
8/182020
カテゴリー:税金
税理士をやっていて、
非常に難しいな、と思うのが
「法人を設立したほうが良いですか?」
という質問です。
この質問に対する絶対的な回答はありません。
この質問が難しい理由と、
唯一の答えを書きたいと思います。
法人設立したほうが良いですか?という質問が難しい理由
どういった観点かによって答えは違ってくるから
法人設立について、どの観点から「良い」と感じるかはその人次第です。
節税を第一に考えている人もいれば、
社長になりたい、
信用力をつけたい、
など法人設立に求めるものは様々でしょう。
仮に信用力をつけたい、という動機であれば
確かに法人のほうが銀行や取引先の信用力は上がるので良いかもしれません。
ただ、デメリット(手間が増える、所得によっては納税負担が増える等)もあります。
ですので、単に「法人を設立したほうが良いですか?」という質問では
何も答えられず、相談者の真の動機を詳細におうかがいする必要があります。
未確定要素が多すぎて、節税にならないかもしれないから
仮に、法人設立が「節税目的」だとします。
実際、
「どのくらいの利益になれば、法人を設立したほうが良いですか?」
という質問は非常に多いです。
ある程度シミュレーションをすることは可能ですが、なかなか難しいです。
下記の未確定要素がたくさんあるからです。
- 法人化した後の売上(個人事業と同じくらい稼げるとも限らない。今回のコロナのようなことも起こりうる)
- 役員報酬の額(年1回しか改定できない)
- 法人負担の社会保険料(シミュレーションに含めていないサイトが多いです)
- 法人化する場合のコストの増加(税理士報酬など)
- 社長個人の所得控除の額
実際、人によって法人化したほうが良い利益水準は異なり、
ネット上で見かける情報では300万〜1,000万とかなりの開きがあります。
ただ、実際のところ上記の利益水準で節税できる金額はそこまで大きくなく(数万〜数十万円程度)、
法人化による手間が増えることを考えると微妙なところです。
どんなに緻密にシミュレーションしたところで、売上が減ってしまったら元も子もありません。
ですので私は基本的に自分から(税金以外の理由で)法人にする必要のない方に、無理に法人化は勧めません。
特に税引前利益が300万円〜1,000万円くらいであれば
事業を安定させたり、その他のことに注力したほうが良いと考えています。
法人設立したほうが良いですか?の唯一の答え
それでも上記の利益水準の方に聞かれることが多いので、
法人設立したほうが良いかもしれない、といえる唯一の答えは以下です。
(あ、唯一と書きながら3つ書いてしまいました、すみません(^_^;))
利益が1,500万円を超えたとき
利益が1,500万円を超えると、個人事業から法人へ切り替えた場合の節税額が
100万円を超える可能性があるので検討する余地はあるでしょう。
売上が1,000万円を超えたとき
売上(海外売上など消費税対象外のものを除く。)が1,000万円を超えた場合には、
その2年後から消費税の納税義務が発生します。
消費税は、売上などお客様から預かった金額から自分が支払った消費税を差し引いて計算します。
消費税は単なる預かった金額なので納めることは当然なのですが、
利益に関係なく支出が発生するので小規模事業者にとっては辛いです。
消費税の納税義務が発生したときに法人設立をすれば2年間はまた消費税の
納税義務が免除されます。こちらの制度を上手に使って節税を図ることができます。
消費税に関しては未確定要素があまりないので
売上1,000万円を超えたことをきっかけに法人設立を検討するのも一つの手だと思っています。
税金以外で必要に迫られたとき
例えば、
- 従業員を雇いたいので応募しやすくしたい
- 銀行からの借入を増やしたい
- 取引先が個人事業主とは取引しないと言ってきた
など税金以外で必要に迫られたときに
法人化することは当然ありです。
法人を設立したいとき
身も蓋もない話ですが、
法人は、その人が設立したい、と思えば設立すれば良いと考えています。
もちろん法人化することによる
税金の違いは説明しなければいけませんが、
法人を作る、ということは自分以外の人格を作る、
ということなので世界観がとても変わります。
個人事業とはまた違った世界が見えてきます。そのような経験こそ大事だったりします。
税金など事業活動のメインではないもの(大切ではありますが)を最初に考えることは
あまり本質的ではないかな、と思っています。
まとめ
法人を設立したほうが良いですか?
という質問がなぜ難しいのか、
そして唯一の答えだと思うところを書いてみました。
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