「源泉徴収」という言葉は給与をもらっている会社員の方であれば馴染みがあるものでしょう。

源泉徴収とは、本来確定申告で自分で計算して税金を納める代わりに、支払う側(給与で言えば会社)があらかじめ所得税を徴収し、代わりに国に納付する制度です。

源泉徴収の対象となる所得には給与の他にも、

  • 利子・配当
  • 上場株式等の譲渡益(特定口座内)
  • 報酬・料金(原稿料、デザイン報酬、士業に対する報酬、外交員に対する報酬等)

などがあります。

以上は、日本に住所のある「居住者」に対する支払いの話です。

日本に住所のない「非居住者」に対する支払いについては、別途ルールがあり、居住者と同じルールをあてはめられませんので、注意が必要です。

 

非居住者に対する源泉徴収

非居住者に対する支払いには、日本の所得税法上例えば以下のものが源泉徴収の対象となります。

  • 日本国内にある土地の売却
  • 人的役務の提供事業の所得
  • 不動産の賃貸料
  • 利子・配当
  • 貸付金利子
  • 使用料
  • 国内にて支払われる給与・年金・退職手当等
  • 事業の広告宣伝のための賞金
  • 生命保険契約に基づく年金等
  • 定期積金の給付補填金等
  • 匿名組合契約等に基づく利益の分配

どういった課税関係になるかは、その非居住者が国内に事務所・店舗・工場等の固定的施設(恒久的施設、Permanent Establishment、俗にPE)があるか否かで変わります。

PEが国内にある場合には

  • 源泉徴収をされた上で、日本にて確定申告

となります。

PEが国内にない(又はPEを通じて稼いだ所得でない)場合には大きく分けて、

  • 源泉徴収された上で、日本にて確定申告(土地の譲渡、不動産所得等)
  • 源泉徴収されて課税が終了(利子・配当、使用料、給与等)

の2通りがあります。

非居住者の方に「日本にて確定申告が必要か?」と聞かれた場合にはまずPEの有無を確認し、

その上で日本にて確定申告が必要な所得なのかを確認すると良いでしょう。

 

租税条約の確認

非居住者に対する支払いの場合、日本の所得税法だけでなく

非居住者の方のお住まいの国との間にある租税条約の有無と取扱も確認しなければいけません。

ここらへんが、国内支払に対する源泉徴収事務に対してハードルを高くしています。

租税条約は、各国の税法よりも優先されて適用されます。(納税者有利な場合に限り)

参考記事:

海外への支払・海外から受領がある場合には源泉徴収・租税条約・外国税額控除を検討する

租税条約によっては免税とされる所得(日米租税条約における使用料等)もありますし、

非居住者に対する源泉徴収税率(多くは20.42%)が軽減される場合もあります。

免税や税率の軽減を受ける場合には、支払いを行う前「租税条約に関する届出書」を支払側を通じて所轄の税務署に提出しなければなりません。

 

他の法律が絡み、難しい判断も

実際、「源泉徴収の対象となる所得なのか?」といった判断は、難しい場合もあります。

例えば使用料です。

使用料とは、著作権の使用料又はその譲渡対価などが該当します。

書いてみるとそのままなのですが、そもそも「著作権」と、その対象となる「著作物」とはなにかを確認する必要があります。

例えば非居住者の方に文章の翻訳をお願いした場合には、「使用料」として源泉徴収が必要なのでしょうか?

国税庁の照会趣旨では、論文の翻訳を非居住者にお願いしたケースを取り上げ、

  • 翻訳文は二次的著作物として著作権法の著作物にあたる
  • 契約において支払い側が買い取る契約になっている

ことを根拠に、源泉徴収が必要であるとの判定をしています。

非居住者に支払う翻訳料|国税庁

 

実際は、これ以外のケースも無数にあると思いますのでその都度判断していくことになります。

実際、税法以外の法律も絡むことが多く判定が難しくなります。

私もスポット相談で「非居住者」という文字をみただけで力が入ります^^;

 

まとめ

非居住者に何らかの報酬を送金するときは、源泉徴収の有無を確認しましょう。

その場合の順序は、

  1. 日本の所得税法上非居住者の源泉徴収の対象となる報酬かを確認
  2. 対象となった場合には租税条約の有無を確認
  3. 租税条約を優先し、必要に応じて租税条約の届出書を税務署に提出

となります。

心配な方は、非居住者の方への支払が発生した時点で税理士にご相談ください。

 

編集後記

昨日は、セミナーへ参加。新橋だったのですが京浜東北線が遅れていて、久しぶりに混んだ電車に乗りました。

 

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