私が小説を読む理由

  • 2025.09.17
私が小説を読む理由
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昔から読書は好きですが、前よりも小説を読むようになりました。

小説はビジネス書や実用書と違って

「明日役立つスキル」

を与えてくれません。

だから、「なんのために読むのかよくわからない

と思って敬遠される方も多いと思います。

そこで、私が小説を読む理由を書きます。

*共感できない登場人物

理解できない人間の思考回路をたどるため

これは、平野啓一郎さんの最近の著書である『文学は何の役に立つのか?』という本に下記のとおり書かれていて気づいたことです。

むしろ文学というのは作品を通じて、共感できない作者のことを考える、という一つの手立てにもなっている。

この文章は三島由紀夫の『金閣寺』を読んだときの平野さんの感想ですが、この「共感できない作者」は、「共感できない登場人物」にも当てはまると思っています。


例えば最近読んだ本でいうと、海外でも人気の『BUTTER』という小説では、男の心を手玉に取る女性容疑者が「理解できない人間」でした。

でも、読んでいるうちに

この気持ちはちょっとわかるかも

といった理解できないなりの共感できる部分も発見できたりするんですよね。

「あなたと私は違うから、お互い交わらないようにしましょう」と関係性を断絶してしまうことが「多様性」と思われているこの世の中で、この「歩み寄り」はすごく大事なのでは、と感じます。

このような「理解できない人間の思考回路を通じて本当の多様性(歩み寄り)を考える」ことが、

小説の醍醐味の1つだと思っています。(現実の世界にこういう人が近くにいたらかなり辛いけど…)

違和感をいち早く察知するため

小説を読み終わった後は、いつも思うことがあります。

「小説家って、こういう視点で世の中を見てるんだな…」と。

良くも悪くも、世の中に対して鋭い眼差しを向けられる人たちだと思っています。

SNSで投稿したら炎上しかねないことも、小説でさらっと書いてくれる。


先日読んだ、芥川賞受賞作家の田中慎弥さんの著書『孤独に生きよ』改訂版で、以下のことが書かれていました。

作家とは炭鉱のカナリアであると、昔からよく言われます。炭鉱現場に吊るされた鳥籠の中にいるカナリアは、異常なガスの発生を探知すると、鳴いて人間にすぐさま知らせる。そうした逸話から、他人より早く危険を察知する者として、作家をそういいながわすことがあるわけです。

たしかになんらかの変化をいち早く嗅ぎつけて、言葉にしていく役割が、作家にはあります。

先ほど、小説家の型は「鋭い眼差しを向けられる人」と書きましたが、

それは言い換えると「世の中への警鐘をいち早く鳴らせる人」なのでは。と思っています。


先日のブログでも紹介した朝井リョウさんの新刊『イン・ザ・メガ・チャーチ』も、恐ろしいくらい現代の闇を描いています。

以下、印象的な言葉がでてきます。

「神がいないこの国で人を操るには、”物語”を使うのが一番いいんですよ」

「何が人を騙すための物語だ。結局誰だって、信じる物語を決めて生きているだけだ。それが世界平和だったり自己啓発だったり陰謀論だったりするだけで、皆各々のドラッグで自分の脳を溶かしながら死ぬまでいきるだけだ。」

宗教も家族も会社もご近所も何もつながりがなくなったこの世の中で、一体何を信じていけばいいのか。

こんな本質的な問いに上記の言葉は鋭く切り込んでいる気がして、寒気がしました。


私も少なからずこの世の中対して「何かがおかしい」という違和感を持っていますが、それをすぐに察知して、言語化してくれるのが小説家の方なんだな、と今は思っています。

今すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなる

「小説は役に立つか?」という問いに対しては、

「今すぐには役立たない。でも、長い目で見れば役に立つ(かもしれない)」

とは言えます。


逆に言うと、今すぐ役立つことって、すぐに役立たなくなるとも思っています。

本当に大切なことは、「◯時間で学べる◯◯!」「速攻◯◯術」

という類の本では学べないからです。


もちろんそういう本も日々の生活や仕事に大事ですが、

小説には小説の、長い目で見る大きな役割があると思っています。

だから私は日々の中に小説を取り入れています。

まとめ

なぜ私が小説を読むのか、書いてみました。

これ以外にも、「ただただ文章が美しいから」「エンタメとして」「教養として」

といった理由でも読みます。

でも一番の理由は上に書いた理解できない人間の思考回路をたどるためと、世の中への違和感をいち早く察知するためです。

小説に興味がある方の参考になれば嬉しいです!

編集後記

土曜日は、久しぶりに近くの散在ヶ池森林公園へ。ここは、地元の人しか来ない(でも割と道は険しい)ので、お気に入りの場所です。池を見て、楽しみました。

日曜日は、小説『BUTTER』に影響を受け、高級バターエシレを丸ごと使ったパウンドケーキを焼きました。(ちょっと焦げた)

次の日に息子に持っていきましたが、「なにこれ美味しい!」といつになく称賛してくれました笑。

最近のあたらしいこと

カトル・カールケーキ

エシレバター

茶月西大井

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