久しぶりに雫井脩介さん著の長編ミステリー小説「検察側の罪人」を読みました。

ドキドキする展開で、一気に読むことができました。

詳しくは書けませんが、この本を読んで思ったのが

「法律は万能ではない」

という当たり前だけど見落としがちなことでした。

法治国家に生きている私たちにとって、法律を守ることは必須です。

しかし、法律を守ることによって守られないこと(倫理だったり、道徳だったり)があったとしたら。

このような法律と現実世界とが対立する場面は数多くあります。

本では殺人事件を追う検事の話でとても重いのですが、私は税に関わる人間として武富士事件をなぜか思い出しました。

この事件は非居住者の贈与税回避スキームとして巨額の税金が追徴課税されたことで有名になりました。

結果としては、納税者が勝訴しました。

このときの裁判官の言葉が頭の片隅にあります。

結局,租税法律主 義という憲法上の要請の下,法廷意見の結論は,一般的な法感情の観点からは少な からざる違和感も生じないではないけれども,やむを得ないところである。(裁判所のHP(http://www.courts.go.jp/)の判例データより

「一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感」という箇所がこのときの裁判官の心情を物語っていると思います。

確かに当時の法律ではどうしても罰することはできなかった。

租税法律主義の基では、立法によって解決を図るのが筋であるとの結果でした。

そうはいっても、この件を逃してしまうことによる国民感情への影響も見逃せない・・そんな葛藤の経緯が長い補足説明に現れていました。

法律は万能に見えるけれど、現実は法律で対処することのできない事柄であふれています。

そういったときに、何を拠り所にするか、どうやって理論武装するか。

税理士だったら税法、通達、判例、社会通念・・こういったものを総合して判断する必要があります。

税法は法律の中のほんの一部ですが、法に携わる者として考えさせられました。

編集後記

夫の勤めている会社が本日株主総会だそうで。

法務担当なのでとても忙しそうでした。

上場企業に勤めた経験があるので、大変さはなんとなく分かります・・。

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