「小説はビジネスに役立たないから読まない」

という方も多いかもしれませんが、

ときに小説は人生にものすごい影響を与えてくれる

ことがあるので数冊に1冊は読んでいます。

 

最近読んだ小説でパンチ力がすごかったのが、

朝井リョウさんの『正欲』という本です。

あまりに面白くて、一気読みしてしまいました。

Amazon.co.jp: 正欲(新潮文庫) 電子書籍: 朝井リョウ: Kindleストア 

 

この本のテーマは「多様性」

読んだ後、軽々しく「多様性を大事にしよう」なんて

言えないな、、と思ってしまいました。(言ったことはない気もするが)

今日は多様性について、特に感じたことを。

(多少ネタバレあります)

 

「多様性が大事だよね、ただし私たち(マジョリティ)が認める範囲内で」

この本のキーとなるのが、

登場人物に共通するとある「性癖」です。

恐らく、多くの人が全く理解できないような。(私も最初「え?」と思いました)

 

彼らは最初から他人に理解されようとは思っておらず、

自分たちが想像できる「多様性」だけ礼賛してなにかやった気になっている

マジョリティ側の人たちをとても憎んでいるんですね。

特に、「マイノリティの人たちとも繋がろう」と

ズカズカ入り込んでくる人たちに対しては

強烈な拒否感を持ちます。

 

確かに、「多様性が大事!」と言っておきながら

実際に自分が出会ったこともない意味のわからない人を

前にしたら、本当に理解しようと思えるのか。

「自分たちが認める範囲での多様性だったらOKよ」

じゃ意味ないですよね。それ、真の多様性じゃなくてむしろ排除に向かっているよね、と。

 

マジョリティ側からの逆襲場面がすごい

一見、多様性と言いながら全然多様性じゃない

無神経なマジョリティと、それに疲弊するマイノリティの心の叫びのお話かと

思ったら、そうじゃなかったんですね。

 

マジョリティの人物(女の子)とマイノリティの男の子で対話(というか喧嘩)

をする場面があるのですが、これがすごい。

 

最初はマイノリティ側の男の子が

「理解できもしないのに多様性みたいな綺麗な言葉ふりかざしてこっちにズカズカ入ってくるな!」

と言いっぱなしだったのですが、

途中からマジョリティ側の女の子が対抗して、

 

「マジョリティはマジョリティで苦しみがある」

ことを言い出すんですね。

 

選択肢はたくさんあるのに、選べない人だっている。

いっそマイノリティ側の男の子のように塞ぎ込んでしまいたい…と。

実際、その女の子はごくごく普通とはいえ、

容姿にコンプレックスがあり、かつ兄弟とも微妙な関係になっている設定になっています。

 

うう、この言い返した子の気持ちも本当にわかるんです。

選択肢はある。でも、負けは見えてる。でも、隠れるわけにもいかないし悩みもあるし。

マジョリティとかそんな大雑把に括るなよ、と。

 

そしてマジョリティ側の女の子が最後に

「理解できないからこうやって話そうとしてんじゃん!」

と言っているのがすべてを物語っていると感じました。

 

結局

LGBTQ理解増進法作っても、

女性の管理職の割合あげるべきだ!とドヤっても、

同性婚認めるべきだ!と叫んでも、

価値観が違う者同士が本気でぶつからなければ、

何も変わらない。

それこそ、理解するための法律なんだから

深い対話が必要なはずですよね。(その割には当事者とは関係ない人たちだけで動いている気が、、)

 

「マジョリティ」「マイノリティ」

という言葉もなんだか曖昧になってきました。

人それぞれ

「この人のここはマジョリティだけど、ここはマイノリティ」

とグラデーションがあるはずで。

軽々しく言えないなと。

 

小説は押し付けがましくなくパンチをくれるから良い

小説は自己啓発本などのように、

直接働きかけてくるものではないのですが、

だからこそ自分で

「あれ、自分間違ってたのかも。。」

とパンチをくらうことができるのが良い点です。

 

数年に1回こういう小説にあたると、

嬉しくなります。

両頬にパンチを喰らいたい方は、是非(笑。

 

編集後記

先週途中から体調がダウンしたので

病院にいきつつ、最低限の仕事。

休養をメインにしました。

コロナでも、インフルでもなくてひとまず安心。

 

最近のあたらしいこと

コロナ検査キットで検査

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