[お勧め本]法律は万能でないこと「検察側の罪人」雫井脩介著 を読んで
3/242017
カテゴリー:本
久しぶりに雫井脩介さん著の長編ミステリー小説「検察側の罪人」を読みました。
ドキドキする展開で、一気に読むことができました。
詳しくは書けませんが、この本を読んで思ったのが
「法律は万能ではない」
という当たり前だけど見落としがちなことでした。
法治国家に生きている私たちにとって、法律を守ることは必須です。
しかし、法律を守ることによって守られないこと(倫理だったり、道徳だったり)があったとしたら。
このような法律と現実世界とが対立する場面は数多くあります。
本では殺人事件を追う検事の話でとても重いのですが、私は税に関わる人間として武富士事件をなぜか思い出しました。
この事件は非居住者の贈与税回避スキームとして巨額の税金が追徴課税されたことで有名になりました。
結果としては、納税者が勝訴しました。
このときの裁判官の言葉が頭の片隅にあります。
結局,租税法律主 義という憲法上の要請の下,法廷意見の結論は,一般的な法感情の観点からは少な からざる違和感も生じないではないけれども,やむを得ないところである。(裁判所のHP(http://www.courts.go.jp/)の判例データより
「一般的な法感情の観点からは少なからざる違和感」という箇所がこのときの裁判官の心情を物語っていると思います。
確かに当時の法律ではどうしても罰することはできなかった。
租税法律主義の基では、立法によって解決を図るのが筋であるとの結果でした。
そうはいっても、この件を逃してしまうことによる国民感情への影響も見逃せない・・そんな葛藤の経緯が長い補足説明に現れていました。
法律は万能に見えるけれど、現実は法律で対処することのできない事柄であふれています。
そういったときに、何を拠り所にするか、どうやって理論武装するか。
税理士だったら税法、通達、判例、社会通念・・こういったものを総合して判断する必要があります。
税法は法律の中のほんの一部ですが、法に携わる者として考えさせられました。
編集後記
夫の勤めている会社が本日株主総会だそうで。
法務担当なのでとても忙しそうでした。
上場企業に勤めた経験があるので、大変さはなんとなく分かります・・。