AI(人工知能)は今後私達の生活を劇的に変えていく。

そう思ってAIに関する情報はなるべく追うようにしています。

先月は日本ディープラーニング協会が主催するG検定(AI、ディープラーニングの基本知識を問う試験)を受け、ひととおりの基礎を学ぶことができました。

AIに関するセミナーにも何度か参加しています。

ただ、どうもAIに対する考え方に関して方向性が見いだせなく、モヤモヤしていました。

そんな中、同業者の井ノ上陽一さんが出版された本『AI時代のひとり税理士』を見かけ、

「これは、今の私に必要な本だ!」判断、瞬時に購入しました。

 

井ノ上さんは、普段からAIの他RPA(Robotic Process Automation)、ITを使いこなしていることがブログから伝わってきます。

読んでみて、誰よりも深く学び、実践している人でなければ到底書けない内容だと感じました。

「AIで税理士の仕事がなくなるぞ!」と無責任なふわふわとした感情論ばかりが蔓延る中で、

AIが私達の仕事に、生き方にどのように影響してくるのかを冷静に、的確に書かれています。

特に響いた部分を抜粋し、私の考えを書いてみます。

「税理士がなくなるかどうか」よりも「税理士のどの部分を残したいか」

「AIで税理士がなくなる!」と言われている昨今ですが、そもそもとして

「税理士は社会にとって必要なのか?税理士がいなくても回っていく世界のほうが人々にとって幸せではないのか?」

ということを考えたことがあります。

そんなモヤモヤをこの本では一掃してくれました。

「税理士がなくなるかどうか?」ということよりも、「税理士を残すべきなのかどうか?」ということを考えるべきではないでしょうか。

納税は全国民がしなければならないことです。だったら、自分で理解し、計算でき、納得して納税できる世界のほう良いはずです。(できれば手間なく)

「社会貢献」という視点から考えても、「複雑怪奇で一般の人が理解できない税法を読み解き、申告を代行する」ことよりも「一般の人が自分で申告できるようにする」ことのほうが、今の時代価値が高いと思っています。

私はこの

「一般の人が自分で理解し、申告できるようになることを支援する」

仕事を残していきたいと思っています。

税理士の3大仕事である税務代理、税務署類の作成、税務相談とは少し外れるかもしれないので

従来の「税理士」の仕事ではないかもしれませんが、

資格に囚われすぎない考え方が大事だと思っています。

一方「税務調査対応」などは人対人で残っていく仕事ではあるのでしょうけど、やりたいかどうかというと・・正直やりたくないです。

こういった「したい仕事か、どうか」といった「主体性」「モチベーション」はAIにはないので

今後の人の「強み」になるはずです。

「書く仕事」こそ自分にしか書けないものにこだわる

AIが「村上春樹風」などの「○○風」で自動文章作成をできる世の中になっています。

ニュース速報も、人間がやるよりAIのほうが早くなっています。

「スピード」「量」では到底AIにはかないません。

そんな状況で井ノ上さんは「自分で」書くことにこだわっています。

書く仕事をするのであれば誰が書いても同じになるような事は書かずに、自分に固有の経験や個性を活かさねば書けないようなものを書くしかありません。

本も自分以外には絶対に書けないと思えるものを書くようにしています。

思わずうなずきました。

「書く」仕事に関しては、今年私も何度か仕事をしました。

井ノ上さんが監修し、共著として参加させていただいた『十人十色の「ひとり税理士」という生き方』では、

今までの自分の経験を基にたどり着いたひとり税理士という生き方を自分の言葉で書きました。

そこには嘘偽りはなく(実際あっても「嘘ありました」とは書けないですが^^;)、失敗もすべて書いています。

「こんな生き方もある」の気づきになればー共著のお知らせ『十人十色の「ひとり税理士」という生き方』

例えばこれが失敗談を集めたビッグデータからAIが自然言語処理して自動で執筆した文章(それっぽい失敗談)であれば

だれも共感してくれないでしょう。それこそ十人が経験した十人それぞれの経験だからこそ意味があるのであって。

また、8月に単著として出版した『会計と決算書がパズルを解くようにわかる本』は、最初から一貫して

「会計・決算書は専門家ではなくそれを利用する人たちのためのものである」

という思想で書いています。

そのため、専門用語をなるべく排除して書きました。

【書籍出版のお知らせ】「会計と決算書がパズルを解くようにわかる本」2018/8/9発売

その理由は、私が類書を読んで「会計・決算書を利用する人のためではなく、既に知識のある人のためのものが多いなあ」

「一般の人が会計・決算書から税金、数字を活かすことまで一気通貫で易しく理解できる本があれば良いのに」

という「感情」があったからです。AIだったらこういった感情は持たないでしょう。

AIでいくらでも「それっぽい文章」が量産される時代だからこそ、「自分の言葉で、感情で、書く」ことにこだわる意味は大きいのはないでしょうか。

「むりやり効率化」の罠ー方向性が違うAI、RPAの利用とは距離を置く

私自身、AIは先に紹介した「G検定」という試験を受けてみたり、RPAについては実際にプログラミングしてみるなどしてそれなりに実践してきました。

RPAソフト・Excel・クラウド会計を連携して請求書を自動作成、送付してみたり。

RPA(UiPath)を使ってExcelからMFクラウドの請求書を自動作成・送付。ちょっとした機能を自分でカスタマイズできる

RPAソフトとExcelVBAを使ってデータをクレジットカード決済サイトにアップロードしてみたり。

【RPA】UiPathとExcelVBAの連携によってcsvデータを自動でクラウド会計にインポート。ルーチンワークこそRPAを活かそう!

RPAソフトを使ってExcelから税務ソフトへ転記してみたり。

【RPA】UiPathでExcel→税務ソフト転記。カオスなソフト入力スキルよりも、Excel・RPA・プログラミングのスキルを上げる

ただこれらはいずれも「仕事をもっと受ける」ためにやっていることではなく、

「今できる最大限の効率化」をしているだけです。

ということを書くのも何度かAI活用のセミナーに足を運んでみたのですが、その活用方法が

ちょっと方向性が違うものが多くモヤモヤしていたからです。

  • 紙の通帳を高速に読み取り、データにしてくれる高性能なAI
  • サイズの違う紙の領収書を自動で判別してくれるAI
  • 一人一台スキャナーを支給して、紙の電子化に成功
  • Excelから何万ものデータを会計ソフトに入力してくれるRPA

以上のようなことで「業務を効率化」することによって「記帳代行の件数」が増やせました!

と聞きました。

効率化の目的が「規模拡大」なのが気になりますが、いずれにしてもひとりではそれはできないので方向性は違うかなと思いました。

現に、紙の通帳や紙の領収書を電子化して送ってもらうことは私はやっていません。

クラウド会計を使うことを前提として、データを活用しています。

お客様は「データ活用」を当たり前に考えてくださる方ばかりなので紙のやり取りはほとんどありません。

 

更に気になるのが、AI、RPAを利用することによる「無理やり効率化」の弊害です。

「仕事の考え方、やり方」が変わっていないまま「大量」「スピード」処理が実現できてしまうからです。

井ノ上さんも下記のとおり書かれています。

RPAの導入が始まっていますが、現場は混乱しています。

ひとまず入れてみようとしているだけだからであり、考え方や仕事のやり方を変えなければ、その効果は出ません。

RPAを導入したものの、分かる人が異動になって使えなくなった、という話も大企業に勤める人から聞きました。

入れるだけ入れても、「何を効率化しているのか」を共有していないと難しいですね。

 

例えばペーパーレスも、

「(既存の仕事のやり方を変えずに)紙を電子化する」

方法だとさして効果はないと思っています。

「帳簿」「通帳」という言葉自体使わないくらいの心構えが必要ではないでしょうか。

(この2つの言葉が「紙」を連想させるので)

 

もちろん紙を電子化して大量に仕事をさばく、といった方向も間違いではありません。

ただ人手もなく、自分が頼りの私にとっては

方向性が違うAI、RPAの利用とは距離を置く必要があることを再認識しました。

 

まとめ

AIが実際にどのように税理士の仕事に影響してくるのか、

モヤモヤしていたものがこの本を読むことによってクリアになりました。

これから税理士になる人、税理士として活動されている人に必読かなと。

それにしても、「実践者」である人の言葉は響きますね。

「見聞きしたこと」ではなく、

やはり自分の頭で考え、行動し、言葉にすることは大事だと感じました。

 

編集後記

昨日は、夫もようやく休みを取れたということで実家にてクリスマス。

ファミチキと不二家のケーキを美味しくいただきました。

 

Today’s New

お客様からいただいたレモンシロップが美味しいケーキ

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