『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』の続編、『「数字」が読めると年収がアップするって本当ですか?決算書オンチのための「会社の数字」が肌感覚でわかる本』を読みました。

 

前作と同じく、著者はネットのお花屋さんを経営する古屋悟司さん、監修が公認会計士の田中靖浩さんです。

前作は古屋さんがお花屋さんを経営していく中で、失敗を経験しながら肌感覚で会社の数字を学んでいく内容でした。

今回は、古屋さんがお花屋さんを経営する前のサラリーマン時代の話が中心となっています。

ストーリー仕立てで、「会社員がなぜ数字を読める必要があるのか」を解説しています。

ほとんど実話ということで、驚きです。

「会社の数字」「決算書」を一から「お勉強」していく内容ではなく、会社員・経営者の方に数字だけでなく「生き方」のヒントも与える内容で、奥が深いものでした。

会社員の方はもちろん、従業員との関係に悩む経営者の方にもお勧めです。

特に気づきになった点は以下です。

会社員が数字を読めることの本当のメリットが分かる

会社の数字や決算書に関わる書籍は沢山出ていますが、そもそも会社員が数字を読めることのメリットを真剣に考えてみると曖昧です。

出世できる、とか、仕事に活かせる、とかふわっとしています。

この本では会社員が数字を読めることのメリットを、ストーリーを通じて具体的に書かれています。

例えば、業界が違えば利益率や儲けの構造が全く異なるということ。

さらには、経営者の方針も数字に影響してくるということ。

売れるためには、広告費を出せば良いと考える経営者もいるし、広告費をかけない分社員に還元させたいという経営者もいる。

中には本当に搾取を前提にしている経営者も。

「年収をあげたい」と思っても上記の理由から不可能、という会社もあるのです。

こういったことに気づくには、簿記とか細かい知識にこだわるのではなく会社の数字の全体を俯瞰的に捉える力が必要です。

著者の古屋さんはその力を会社員、経営者両方の経験を通じて理解していったようです。

数字がわからないと、信用が築けない

この本にも書かれていますが、会社は従業員に対して多くのコストをかけています。

採用、教育、社会保険料、オフィス・備品などの他、給与計算、経理を行う人件費もかかっています。

そういった「会社の数字」が分かっていないと、

「売上さえ上げれば良い(残る利益は度外視)」

といった勘違いをおこし、

「こんなに頑張っているのに給料があがらないのはなぜ?」

「社長ばかり懐を厚くしているのではないか」

といった疑念を持ってしまいます。

数字(特に損益計算書)を見れば、その会社の利益構造、利益率が分かります。

給与以外にも経費がたくさんあることも分かります。

会社がそう簡単に給与をあげられない理由が分かれば、社長の気持ちも少し分かるでしょう。

この本の中で古屋さんが勤めていた会社の社長が古屋さんに決算書を教える場面がありますが、

とても良いことだと思いました。

経営者は、数字を従業員と共有してこそ信用を築けるものだと思っています。

経営者になって初めて気づく会社のサポートのありがたさ

著者の古屋さんは、営業の仕事をして、その後起業しています。

会社にいたときは売上を考えるだけでよかったのに、1から10まで全部自分でやることの大変さが身に染みてわかったようです。

そういったことを知らないと、会社の中で営業マンがトップセールスになって

「自分が稼いだお金でみんなを養っている」といった勘違いがおきてしまいます。

営業マンが「売上」だけに集中できるのは、儲けの仕組みを考える社長と、マーケティング、経理など他の従業員の支えがあるからこそです。

 

以前、同業者(税理士関係)で、ほぼ毎日外に出て、新規の顧客を開拓している人がいました。

その方が

「0から1にする(売上を作る)のが一番すごい仕事。内勤の人たちは自分が創ってきた仕事をただするだけなのだから、自分の給料が高く、仕事をふられるひと達が低いのは当たり前」

と言っていました。

そのときは「ふーん、そうなのか」と思いましたが、今は違う考えです。

その人が毎日のように外に出て営業ができるのは、長期的な利益を生む仕組みを考える社長、会社で給与計算・経費精算をし、請求書を発行する人たちの支えがあるからこそです。

会社はそもそも一人ででき得ないことを行うためにあるのだから、それぞれの役割が違って当然。「仕事のすごい・すごくない」もないはずです。

もらう金額の違いはあっても、それが「すごい」仕事をしてるから、ということではありません。

それにいくら売上をあげたとしても、一人で億単位稼ぐことはできませんし、会社のブランドがあってこその稼ぎです。

少なくとも会社の数字が読めれば、こういった考えになることは少ないでしょう。

会社の数字全体を見ずに上から目線の人は経営者から信頼されず、結果的に年収も上がらないでしょう。

 

 

立場は違えどこの気持は私も分かります。

私の場合は「経理」「総務」などの営業をサポートする間接部門に長くいました。

従って独立したとき、「あ、自分で仕事とってこなきゃいけないんだ」(当たり前)

と、勤務していたときの営業の方のありがたさをあらためて実感したのです。

ちょっとした支出もすべて自分の懐からですし、「え、利益残らなくない?」という月も。

こんな経験によってようやく数字を肌感覚で理解し、厚いサポートをしてくれた経営者の気持ちがわかったのでした。

この考えって、家族にも言えますね。

夫(妻)が外で安心して稼いでこられるのは、家を快適に保ち、子供を守る妻(夫)がいるからこそ。

たまにお互いの役割をチェンジしてみると、その大変さに気づくはずです。

会社も同じで、数字を共通項とした「感謝の気持ち」「信頼」が大事ということに、気付かされます。

お金だけで解決できない「生き方」

この本のエッセンスは最終章に書かれています。

その中でも「劣等感はお金で解決できない」の言葉が深いなと思いました。

転職を繰り返す人で多い理由が

「給料が低いから」

ですが、ほとんどの場合「他社」「他人」と比較して、です。

では給料がいくらあればよいのか、となるとはっきり答えられない人も多いのではないでしょうか。

「多ければ多い程よい」なんて言う人も。

こうなってくると、「いくら稼いでも結局足りない」ということになります。

いくら稼ぎたいか、を金額だけで考えては振り回されるだけです。

そこで自分がどんな稼ぎ方(生き方)をしたいか、が重要となってきます。

私も独立前までは、「お金は多ければ多いほど良い」なんて単純に考えていました。

しかし今は考えを改め、「自分と家族の時間を第一優先にし、必要最低限のお金で自由に生きていく」稼ぎ方を軸にしています。

大事なのは、金額ではなく、「どう生きたいか」という自分軸であることを再確認しました。

最後の章は、この本のメインテーマである会社の数字だけでなく「生き方」も深く考えさせられるものとなっています。

まとめ

古屋悟司さん著の『「会社員はなぜ数字を読むスキルが必要なのかー『「数字」が読めると年収がアップするって本当ですか?決算書オンチのための「会社の数字」が肌感覚でわかる本』を読んで気づきになった点をまとめました。

簿記や会計、決算書の「知識」の本は既に溢れています。

そういったお勉強本ではなく、そもそも「なぜ数字・会計を学ぶ必要があるのか?」といった「考え方」を学ぶ本は少ないので貴重です。

さらっと読めるかと思いきや、一度読んだだけではきちんと理解できず2回読みました。

会社員の方だけでなく、従業員とのコミュニケーションを円滑にさせたい経営者の方にもお薦めです。

(※この本には個性的な登場人物が出てきますが、私はオネエ言葉を話す元上司がツボにはまりました(笑))。

編集後記

週末は、気になっていたブログ内のカテゴリーを整理。

一気に500件以上の記事を変更したので時間がかかってしまいました。。

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