山口周さんの本が好きでよく読んでいます。

最近発売された『ビジネスの未来 エコノミーヒューマニティを取り戻す』という本は、

「物質的不足の解消が実現した現代

において、日本が目指すべき高原社会とは?」

ということがテーマの本です。

ポストコロナ時代に、私たちがどのように生きていけば良いのか、

ヒントがたくさん詰まっています。

山口さんの他の本と同様、

単なる主観ではなく科学的なデータに基づき、第三者の言葉(経済学者など)もふんだんに引用して

美しい言葉で書かれています(横文字が多いので、たまに調べないとわからないことも)。

いままで読んだ本の中で一番心に残りました。

特に最後に、私たちに向けられた厳しくも、含蓄のある言葉が響きました。

お勧めできる本です。

特に心に残った部分を書きます。

ビジネスの歴史的使命の終了

山口さんは、「ビジネスはその歴史的使命(物質的不満を解消させること)を終了した」と書いています。

ビジネスコンサルタントとして活躍された人が

そう言い切っているのが、とても新鮮でした。

既にそれはデータにも現れていて、

物質的な豊かさが生活の質・幸福度につながっていないことが書かれています。

日本の自殺の多さを考えるとわかります。

でもそれでは数多くある会社は困ってしまうので、なんとか延命を図ろうとしているのが

現代と説明しています。

「マーケティング」と称して、

消費意欲や不安を煽り、要らないものを作り、売る。

そのような欺瞞に気づいた人とたちが疲弊し、うつ病になると指摘しています。

そこには、「なんのために生きているのか、働いているのかわからない」

という「意味の喪失」が重く横たわっていると・・あらためて突きつけられると、深刻です。

そこで、企業は物質的不満を解消することは既に終了したのだから、

そのさきの「文化的豊かさを生み出すビジネス」への転換を提唱しています。

経済成長、大量消費とは対局の

北欧主義的な社会民主主義社会、

イノベーションによる社会課題の解決、

企業活動による文化的価値の創造

といった世界観をコンサマトリー(自己充足的な)「高原社会」と本書では書かれています。

経済成長しないことが問題ではなく、何を目指せば良いのかわからないのが問題

物質的不満が解消された時代に、「物・サービスをどれだけ生み出せるか」を指標とする

GDP(しかも恣意性がかなり組み込まれていると山口さんは指摘しています)

が何ポイント上がった、下がった、○○国に抜かれた、

と議論しているのは滑稽と指摘されています。

真に問題なのは「経済成長しない」ということではなく「経済以外の何を成長させれば良いのかわからない」という社会構想力の貧しさであり、さらに言えば「経済成長しない状態を豊かに生きることができない」という私たちの心の貧しさなのです。

一例として、

大阪万博の展示物のお話を例にしています。(人間洗濯機?といったものが展示されていたようです。嘘ではなく。)

「役立つ」に執着した結果、醜い電線が町中をはびこり、

統一感を無視したビルが立ち並ぶ東京はその象徴なのかなあ、

とぼんやり考えました。「心の貧しさ」が重く響きました。

GAFAMは人を幸福にしていない

あれほど人々の生活を豊かにした、というイメージのある

巨大テック企業であるGAFAMでさえ、

人を幸福にしていない、むしろ不幸にしている結果も出ているようです。

確かに昔に比べて相当便利になったとはいえ、

「生きることが楽しくなったか?」

というとそうでもないですよね。

山口さんのおっしゃるとおり、

便利さはさておき、人の幸福度はSNSをはじめとしたサービスによって

明らかに下がっていると私は思っています(だからこそ適度に距離をおいています)。

結局のところ、このようなイノベーションも、

資本主義を前提とした経済合理性の内側だけの解決法であって、

「役立つ」ことには貢献しても、「意味ある」には貢献していないのだと思います。

解決すべき問題は経済合理性の外側にある

世の中の解決すべき問題は、経済合理性(投資が回収できるライン)の外側、

つまり難易度が高く、スケールも小さく、投資が回収できない(赤字になる)

しか残っていないと著者は書いています。

例えば、希少な「難病」を患った人たちに対するワクチン開発ですね。

ほっておいて良い問題であるはずはないけれど、

経済合理性だけで動く市場経済に任していては解決できない問題です。

医療、介護、教育、環境問題、貧困・・などもほおっておいて良い問題ではないはずです。

これらは既得権益が絡み、国に任せていても改革はすすみません。

そこで、UBI(ユニバーサルベーシックインカム)制度を前提に、

「失敗」しても大丈夫な世の中をつくり、

挑戦する人を増やすことが大事と著者は書かれています。

ベーシック・インカム制度には賛否両論ありますが、

既に実験を試みたヨーロッパでの成功事例も挙げられています。

私もベーシック・インカム制度は

今後成熟社会を進むしかない日本には必要と考えています。

まとめ

山口周さん著の『ビジネスの未来 エコノミーヒューマニティを取り戻す』

をお勧め本として紹介させていただきました。

この本は弱い人たちに対する配慮を感じました。

経済学者、コンサルタントといった方達はいわゆる強者であるため、

なかなかそのような配慮ができない人たちと思い込んでいましたが

読んでいて非常にバランスのとれた方なのだなと(おこがましく)感じました。お勧めです。

編集後記

昨日は、レンタルスペースに場所を変えて法定調書・給与支払報告書・執筆を集中して行いました。

最近のあたらしいこと

フレッシュネス パン工房 馬車道 生食パンの練熟

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