公認会計士の林總さんの最新本である「会計は一粒のチョコレートの中に」を読みました。

著者は「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」などストーリー仕立てで会計(特に管理会計)を解説する本を頻繁に出版されています。

著者は私が会計大学院に通っていたときに管理会計を講義していただいていたこともあり、出版された本はよく読ませてもらっています。

難しくなりがちな管理会計を、実際の会社の活動に沿ったストーリー仕立てで説明してくれているので好奇心から入ることができる内容ばかりです。

今回読んだ最新本はチョコレート製造会社を主人公が再生していくというストーリーでした。

そこで会計の活かし方とともに考えさせられたのが、経理の真の役割です。

具体的には「経理部は会社の宿り木か」という章に書かれています。

長年企業で経理をしてきた者として疑問に感じていたことがクリアになってきました。

経理は仕訳屋さん?

私は税理士になる前は様々な会社の経理部で働いてきました。

外資系企業、中小企業、上場企業、業種も規模も様々です。

その間ずっと「経理部の本来の仕事はなんだろうか?」とずっと考え続けてきました。

中小企業では記帳、申告、資金繰り・予算管理など幅広く業務を行っていました。

経営者の判断に必要な情報をその都度準備はしていたものの、「言われたことをやる」にとどまり自らが経営に数字をどう活かすかまでは考えられていませんでした。

一方上場企業では業務の範囲が狭まり決算、税務申告、開示が主な仕事でした。

上場企業では経営者と接する機会すらなくただ法律・制度に必要な数値を作ることだけに専念していました。

もちろん大きな会社は役割がはっきりしているのでそのことには疑問は抱かなかったのですが、

「経理部の本来の仕事はなんだろう?」という本質的な問いはずっと持っていました。

中小企業では特に経理はまだまだ「事務屋さん」と思われているところが多いです。

外資系企業にいたとき、「コストセンター」(利益がでない部門のこと)として経理部の費用は各プロフィットセンター(営業部など利益を生み出す部門)に配賦されることも

「経理は利益を生み出さない」

という思いを強くし、「自分の本来の仕事はなんだろう?」と常に感じていました。

経理部は情報製造業

そんな疑問があるなか、上場企業にいるときに研修講師として来てくれた公認会計士の武田雄治先生の言葉

「経理部は情報製造業」

が腹落ちしました。

経理部の本来の仕事は数字を作って、報告して終わりではなく価値ある情報を製造することなのだとそのとき理解しました。

経理部の強みは他部署にはない圧倒的な情報量です。

決算短信や有価証券報告書はあくまで外部に報告する書類です。

そういった外部への報告だけでなく、経営者の意思決定に役立つ情報をスピーディーに提供することが、経理の真の役割だと気づきました。

経理こそ会社の業務を深く知る必要がある

会社の状態を客観的に知ることのできる決算書は、簿記の技術から生み出されます。

そして簿記の最小単位は「仕訳」です。

仕訳は、会社の取引を数字と文字とで左、右に記録する作業です。

この仕訳作業は日商簿記3級程度の知識があればできますが、その大前提に会社の業務を理解していることが必要となります。

例えば冒頭に紹介した林先生の新刊「会計は一粒のチョコレートの中に」には、チョコレートの製造工程が書かれています。

会社の事業を深く知らなければ、どこまでを原価にするか、変動費と固定費をどう分類するか、間接部門の配賦基準をどうするか

といったことが分かりません。

いくら簿記の教科書に書いてあったことでも実際は会社によって経理方法は大きく異なります。

経理が本来の役割をしていくためには、その前提として簿記の知識ももちろん必要ですが会社の業務を深く知ることが必要です。

まとめ

林總さんの新刊「会計は一粒のチョコレートの中に」を読んで「経理部の真の役割は何か?」を考えてみました。

仕訳など単純作業はAIに替わる、と言われていますが、経理の真の役割である「経営者と一緒に数字を活かしていくこと」は人間にしかできないと思っています。

編集後記

昨日は問い合わせ対応、クラウド会計導入コンサルティングなど。

クラウド会計のレポートでは作れない帳票をどうするか悩み中です。

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