以前、税理士を目指したきっかけを「パズルをしているようなワクワク・ドキドキ」という表現を使い記事にしました。

インタビューを受けて税理士を目指した原点を思い返す

この記事を読んでくれた方と先日お話をする機会があったのですが、そのときに

「私は会計だとか簿記とかはいまだにとっつきにくく苦手です。『パズルをしているような・・』という表現は私には新鮮でした。どのような感覚なのでしょうか?」

と聞かれました。

自分は何気なく当時勉強した簿記の感触を言葉にしてみたのですが、

思えば「会計・簿記はとっつきにくい」

と思う人が世の中は大半です。

本屋さんには、これでもかと易しく書いた会計本が所せましと売られています。

なぜこれほどまで会計に苦手意識を持っている人が多いのか、考えてみました。

積み上げ式の勉強法の弊害

税理士試験がまさにそうですが、まずとりかかるのが簿記の勉強です。

簿記は、外部に公表するための財務会計を支える記録の技術です。

簿記の記録の最小単位が「仕訳」ですが、簿記検定や税理士試験はこの仕訳を細かく学びます。

お馴染みの「借方」「貸方」も仕訳の一部。

この時点で「借方?貸方?どっちだっけ」と嫌になってしまう人も多いのではないでしょうか。

簿記の技術を学び、財務会計を一通り理解できたら税金計算のための「税務会計」、経営に生かす「管理会計」へと学習が進みます。

このように会計は段階を経て理解を進める積み上げ式の勉強法をとっています。

じっくり理解して進めたい人にとっては良いかもしれませんが、

「自分が今会計全体のどこを勉強しているのか、そしてこの知識が何に役に立つのか」

が分からないと勉強を続けるモチベーションも続かないのではないでしょうか。

特に経営者の方は細かい仕訳にとらわれず、全体を俯瞰する視点が必要だと思います。

会計の全体を俯瞰する

前述したとおり、会計には大きく分けて

財務会計・・・外部の利害関係者(株主、債権者)に対して情報(BS、PLなどの決算書)を提供することを目的とする会計

税務会計・・・税金の計算を目的とする会計

管理会計・・・経営に生かす会計

があります。

具体的には記録技術である簿記によって支えられた財務会計を土台として、税務会計、管理会計が存在します。

テキストなどではこの3つは別々に説明されていることが多いです。

しかし財務会計を土台として、税務会計・管理会計があることを考えると一緒に理解することがまず大事です。

税務会計が存在する理由

税金は会社の儲けに対して課されるものです。

そこで、

「なぜ、財務会計上の儲け(当期純利益)を算出しているのに、わざわざ税務会計なるものが存在するのか。当期純利益に税率をそのままかけて税額を求めればいいのでは?

と思う人もいるはずです。

その理由は、財務会計と税務会計の目的が違うからです。

前述したとおり財務会計は、外部の利害関係者(株主、債権者)に対して正しい会計情報を提供することを目的とし、

税務会計は正しい税金計算を行うことを目的とします。

税金計算の根底にある考え方が「課税の公平」です。

外部の利害関係者に対して正しい会計情報を提供すること=課税の公平につながるとは限りません。

例えば、保守的な考えで費用を多めに見積もることは外部の利害関係者に正しい会計情報を提供することにはなっても、

無限に認めていたら納める税金も少なくなり、他の会社との課税の公平が失われてしまいます。

そこで税務署は財務会計上算定された利益に様々な制限を加えています。そのために存在するルールが「税務会計」です。

管理会計は攻めの会計

管理会計は、経営に生かす「攻めの会計」とも言われています。

また、財務会計が「過去の会計」であるのに対し、管理会計は「未来の会計」であると言われます。

例えば

  • 値上げすべきか、しないべきかの判断
  • 設備投資をするにあたっての収益性・リスクの検証
  • 不採算部門の撤退の判断

などに使われます。

日々の資金繰りや融資対策なども広い意味では管理会計に含まれるでしょう。

個人的にはこの未来の意思決定をしていくための管理会計、非常に重要だと思っています。

税務会計も管理会計も財務会計が土台となっている

課税の公平を実現するための税金計算のルールが「税務会計」ですが、一から税金計算を行うのではありません。

税金計算の土台となるのは企業が簿記の技術をもとに算定した財務会計上の数字(当期純利益)です。

一方管理会計も、土台となるのは財務会計上の数字です。

例えば、管理会計上は会社が管理していきたい数字(人ごとの売上だったり、坪単位当たりの売上だったり)にフォーカスしますが、それぞれの数値は財務会計上の数字をズームアップしたものです。

そう考えると、財務会計の記録技術である簿記の仕訳一つ一つが、外部に公表する情報だけでなく税金計算、経営者の意思決定にも繋がっていることが分かります。

小さな単位の仕訳一つ一つが、広範囲に影響することをイメージできれば、少しは会計の勉強も楽しくなるのではないでしょうか。

まとめ

会計はなぜとっつきにくいのか。

その一番の原因は全体を俯瞰できないことにあるのでは、と思い記事にしました。

かなり漠然とした説明ですが少しでも会計に興味を持っていただければと思います。

私の場合は、たまたまパズル感覚で楽しめていたから勉強を続けられていただけなのかもしれません(^^;・・。会計の全体像を理解したのはずっと後でした。

まずは会計全体を俯瞰し、どこに数字がつながるか、イメージすることが大事だと思います。

編集後記

昨日はブログ記事を読んで知っていただいた方と横浜・関内で打ち合わせ。

大小問わず様々な会社で経理を行ってきた方で、貴重な実務のお話を聞くことができました。

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