藤井保文さん、尾原和啓さん著『アフターデジタル』『アフターデジタル2』という本を

読みました。

既にアフターデジタル化が進んだ中国の事例を参考に、

日本が今後どうアフターデジタルの時代に対応するか

ということが書かれています。

中国の事例は知らないことばかりで衝撃的でした。

すべてのビジネスパーソンにオススメです。


合わせて税理士という職業柄、アフターデジタル化された社会における税制・経理は

どのようなものか?

といったことを考えるきっかけにもなりましたので、

おもうところを書いてみます。

アフターデジタルの世界

この本では、以下のとおりビフォアデジタル(今まで)とアフターデジタル(これから)の世界が紹介されています。

  • ビフォアデジタル・・・オフラインの世界が中心で、ツール的な存在としてデジタル領域がある
  • アフターデジタル・・・オンラインの世界が中心で(常時接続社会)、リアル世界がデジタルに包含される

図式でいうとこんな感じです(書籍をもとに、執筆者が作成)

もはや「デジタルを活かす」のではなく、

「デジタルが当たり前で、ツール的な存在がリアル」

という図式です。

(実際はこの図式に違和感を抱く人も多いと思います。それは今までの世界を考えると仕方ないことかと思います)

この流れは2020年の新型コロナの影響で加速したのではないでしょうか。

普段はオンラインが中心で、

リアルの場が非日常(特別)であるという状態です。

コロナで急にこの流れになったのではなく、

なかなか進まなかったアフターデジタル化が

コロナをきっかけに急速に進んだと認識しています。

「拠点」「モノ」を基準にする税制の限界

ここからは、税の専門家として考えるアフターデジタル後の税制のあり方です。

2020年時点の税制は、

「拠点」「モノ」を基準としたもので、

現在のアフターデジタル化しつつある社会に追いついていません。

いつの時代も法律が変わるのは時間がかかりますが、

この急速な時代の変化に税制は1周、2周くらい遅れている気がします。

特に国境を超えるデジタル取引については、

2015年に一部改正があったものの(国境を超える電気通信役務の提供の取り扱い。

この改正によりAmazon等の国境を超えてモノ・サービスを提供するプラットフォーマーが日本で消費税を納めることになりました)、

法人税、所得税は基本的には事業所得について拠点(支店や事務所など)を基準として

日本で課税するかどうかを判定しています。

アフターデジタル社会の税制は、個人・中小企業にも影響がある

デジタル取引への課税については、

巨大IT企業(GAFAと呼ばれるGoogle, Amazon, Facebook, Apple)の租税回避対策を

メインにOECDがBEPS(Base Erosion and Profit Shiftingの略。税源侵食と利益移転)プロジェクトを

立ち上げて議論を続けています。

拠点を基準とするのではなく顧客がいる市場国にも課税配分をするといった内容です。

こうした内容は個人や中小企業にとって関係ない話のように思えるかもしれませんが、

国際ルールが変われば2国間の取り決めである租税条約、国内の税制もいずれ変わります。

そうすると、国境を超えて仕事をする個人、中小企業にも少なからず影響が出てくるはずです。

アフターデジタルの時代に合った経理

このようにスピードは遅くても、

着々とアフターデジタルの時代に合った税制が整備されてきています。

もうひとつ注目したいのが、アフターデジタル化に向けて

経理も大きく変わろうとしている点です。

ペーパーレスもその一つだと思っています。

文字通り捉えると単に「紙を使わない」という印象が出てしまいますが、

紙を使わないこと含め、すべてがデジタル化された世界に合った経理が必要になると考えています。

「デジタルが当たり前」

ということになれば、

「デジタルで取引をし、デジタルで保存するのが原則」

という時代になります。

(現在は逆で紙が原則、デジタルが例外ですが)

このようなアフターデジタル化された「少し先」の時代を見据え、

経理業務を捉え直してみることが

経理の本来の役割をじっくり考えることにつながる、と思っています。

 

まとめ

『アフターデジタル』を読んで、

アフターデジタル社会に合った税制・経理が必要と

思うところを書きました。

アフターデジタル社会は嫌悪感を抱く人も多いと思いますが、

中国のように一気にデジタル化する形で日本で進められることはないと思っています。

とはいえ、緩やかに常時接続社会は進むことは間違いなく、

知っておいて損はない内容かと思います。

 

編集後記

昨日は、年末調整を中心に。

 

最近のあたらしいこと

リンコス 横浜馬車道店

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